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戎橋政造の裏日記2

戎橋政造の裏日記2です。 だらだらです。

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「味わう羊」

 その日僕はリビングにあるソファに寝ころび、ある学術的実験に勤しんでいた。 「羊が1264匹」 完璧に覚醒した状態で、羊は何匹まで数えられるのかという実験。 「羊が1265匹」 眠れない夜に、羊を数えるのはよく聞く話だが(最近はあまり聞かないけど)眠らないように数えると、どこまでの羊を見られるのか疑問に思ったのだ。 「羊が1266匹」 昔、天才バカボンの漫画で、羊を数えようとして想像するのだが、羊の姿がわからないと言う話しがあった。とてもユニークだと思った。 「羊が1267匹」 しかし僕は羊の姿を知っている。完璧では無いけど、その姿、特に目を覚えている。数年前ドイツでの恐怖体験だった。マイナスドライバーのような目が、大挙して襲ってくる。 「羊が1268匹」 いや、こんな余計な事を考えるべきではないのだ。集中して羊を数え続けなければ、羊は柵を跳び越えなくなるかもしれない。僕は忠実な牧羊犬のように、羊を監視し続けなければならないのだ。 「羊が1269匹」 「何やってんの?」 気が付くとソファの横に彼が立っていた。いつ来たんだろう? 「羊を追ってる。1270匹目」 僕は98%を羊に集中して答えた。2%の返事でも彼は納得したようだった。 「あのさ、前から気になってた事があるんだけどさ」 「何?1271匹」 「『味わう』って言葉あるじゃない?」 「あるね。1272匹」 「『よく味わって食べよう』とかのアレ」 「うん1273匹」 「こういうとき、なんて言う?『おまえにも味○○せてやる!』」 「は?」 返事が70%になった。羊は30%の曖昧さで柵を跳び越えている。1274匹目だった。 「味わわせる?味あわせる?」 なんだろう、昔70年代的ドメスティック映画で、黒レザーに身を包んだハスッパな敵役女が、「アタイの苦しさを、おまえにも味○○せてやる!」って言ってた気がする。なんて言ってたんだろう。 「言葉の意味を考えると、味わわせるなんだけど、音で聞くと味あわせるなんだよね。」 「ちょっと待って」 僕はパソコンを起動し、ワープロソフトで変換してみた。 「味わわせる・・・ちゃんと変換するね。味会わせる・・・会わせる?意味が違ってくるね」 「そう。でも口に出して味わわせるって言うと、違う気がしない?」 「そうだねぇ・・・」 彼は首をひねりながら、部屋を出ていった。彼の疑問は解決しないままだった。僕はまた羊を数える作業に戻った。 「羊が・・・何匹?」 羊は違う柵を跳び越えていた。僕の疑問も解決しないままだった。あきらめて1から数え直す。 「羊が1匹、羊が2匹、羊が・・・」 何匹か柵を越えた時 「あ、今の羊、星形の模様がある」 灰色の猿が、ハンマーで僕の後頭部を殴った。次は足し算をしなければならないかもしれない。
  1. 2006/10/30(月) 22:32:00|
  2. 解決しない話
  3. | コメント:5

「コマーシャル」

「なんかさぁ、こう何気なくテレビとか見てるじゃない?」 テレビドラマがCMに入った時、突然彼はこう切り出した。不意を突かれた僕は、状況を思い浮かべようと努力してみた。 「うん、見てると?」 「コマーシャルでその終わりぐらいに、『検索・クリック音』みたいなのが出るヤツ、多くない?」 「うん、多いね」 確かにそうだ。いつからだろう、やたらとそんなCMを見るようになった。 「あれさぁ、押しつけがましく感じない?」 「なんで?」 「なんとなく、なんて言うか、・・・なんて言おう」 彼はしばらく考え、そしてこう言った。 「陰謀っぽいって言うか・・・」 「陰謀?誰の?」 いつも彼の話は突飛だった。押しつけがましい陰謀? 「そう。なんか不景気がそうさせてるって言うか・・・」 「不景気が押しつけがましい陰謀を策略してるって事?風が吹けば桶屋が儲かるみたいな?」 わからなすぎる・・・ 「もっと単純にさ、不景気じゃない?今。でね、どこかの政府が景気回復考えてさ、メディア使って商品を買わせようとするの。それでコマーシャルに、検索してもっと商品を知って、購入しましょう。そしてお金を回しましょうってな事を言わせるの。」 「そんなので回復すんの?」 「きっとサイトにアクセスすると、何かいいことがあるんだよ。代理店とかに。」 いいことって何だろう・・・ 「いつだったか、地デジが見られるパソコンのCMで、キグルミのヒトが誰かってクイズがあってさ、それに例の検索が出たんだよね。あと、コンビニCMで、透明のお笑いコンビが誰かって検索もあった。」 「ああ、あったね。僕も検索した」 「ほらね。そうすれば検索数伸びるじゃない。」 「そうだね」 「ただ検索数伸びてもなかなか儲けに繋がらない。そこでアクセスすれば何かいいことが起こるようにするの。作った側にね。」 ・・・そうなのかな・・・ 「なんでそう思ったかって言うと、あの『検索・クリック音』がついてるCM、きっと1社の広告代理店が全部作ってんだよ」 「え?そうなの?」 「だってさ、確実にパクって2番3番煎じじゃない?あれを別の人たちが考えてるとすると、かなりマヌケでオリジナリティとか無いじゃない。まさかそんなことする訳ないじゃない、広告のプロが。」 「たしかにマヌケな話しだね」 「だから1社で作ってるんじゃないかって思ったワケよ。きっと作ってんのは・・・」 僕は身を乗り出して聞いた。 「誰?」 「***********」 「マジで?」 長い沈黙が訪れた。僕は薄ら寒い気分だった。無意味に思えたテレビの雑音が、急に生々しい物に感じられた。 ドラマは終わり、またCMが流れ始めた。きっと来年の今頃は、全部のCMに『検索・クリック音』がついてる気がしてきた。入歯接着剤とか痔の薬とか、アヒルの生命保険とか時をかけるカフェオレとか・・・。 「今の話しとは違うけどさ、これも変だよね」 テレビではジャングルジムの下敷きになった外国人が映っている。突然ジャングルジムに襲われて、助けを求めるのだが英語で女性には理解できないと言う、英会話学校のCMだった。 「最初英語がわからなくて、公園から出て英会話学校に入って行くじゃない?で、戻って『Can I help you?』って言う。」 「今言ったね」 「ほら、この外国人すごく髪伸びてるじゃない。ものすごい年月経ってるって事でしょ?たかが『Can I help you?』覚えるのに。」 「ま、そうだね」 「この女性の物覚えが恐ろしく悪いのか、この英会話スクールが無能なのかって話しよ。」 「うーん」 「すごくマイナスイメージだと思うんだけど。どういう意図があるのか知りたいな。あとあれね、『In the bus 999~』とか歌ってて、『No! In the bath! bath!』って訂正されるやつ。バスに乗って歌ってるのに、風呂って訂正されるってどうよ。」 「前のが風呂でやってたから、そのまま使ったんじゃないの?歌」 「マヌケだね。あ、もういっこ思い出した。最近見ないけど、ハコ型の頭と、コンセントのしっぽがついたサルのCMあったじゃない?」 「あったね」 「あれ、何がおもしろかったの?」 何を言ってたんだっけ? 「銅像が出てきてさ、サルが言うの。『銅像、よろしく。銅像、よろしく。なんちゃって』って、2回も言うの。」 ああ、言ってた気がする。 「ドギモ抜かれたね。すごすぎて。」 「なかなか無いセンスだからじゃないの?おもしろいって思うヒトが、きっといるんだよ。」 「マヌケだね。きっとそんなマヌケなCM作ってんのも、1社かもね。」 「また陰謀?」 「そう、今の僕らみたいに、『納得できない=気になる』って戦略でさ、またサイトにアクセスさせて・・・」 「そう考えるとセコいね」 「うん、安っぽい。怖い世の中になったねぇ。」 「それもさっきの・・・」 「うん。***********だよ、きっと」 僕はその夜夢を見た。有名な漫画家と有名なシンガーが、球団を存続するかどうかでもめていた。ハコのサルはダジャレばっかり言っている。変なしゃべり方の女が「ウサギ男だったのね、タクちゃん」と言い、またアレが現れた。『検索・クリック音』 僕はスイッチを切った。
  1. 2006/10/27(金) 11:48:00|
  2. 解決しない話
  3. | コメント:3